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「花より団子」や「食欲の秋」など、食べることに関連した諺を耳にします。美味しい、そして 楽しい様子が伝わってきます。私たちが好きなものを食べ、歯触りや歯ごたえを感じることが できるのは、『歯』のおかげです。
歯の本数は28本、親知らずを含めると32本です。
一般的に20本以上の歯があれば、殆どの食べ物を噛んで食べることができ、5本以下になると、バナナやうどんのような軟らかいものしか噛めなくなると言われます。
そのため、歯の本数は栄養状態にも影響します。しっかり噛むことが出来れば、いろいろなものが食べられるため、多くの栄養素の摂取状況が良好になります。これは「8020運動(80歳になっても自分の歯を20本以上保とう)」の論拠にもなっています。
ちなみに、8020達成者は2人に1人以上(令和4年厚生労働省による歯科疾患実態調査)。いくつになっても何でも噛んで食べられる、例えば、堅焼きせんべいをバリバリ‥とは、実はすごいことなんです。
*自分の歯にはかないませんが、入れ歯でも「きちんと噛める」状態であることが重要です。
ありがたい歯ですが、歯を失う最大の要因が歯周病です。
歯周病は、歯肉(歯ぐき)や歯を支える歯槽骨など、「歯周組織(歯の周りの組織)の病気」で、歯周病菌の感染によって起こります。最初に歯肉が炎症を起こし(歯肉炎)、進行すると、歯肉以外の歯周組織にまで炎症が広がり(歯周炎)、歯槽骨が徐々に破壊されます。
原因は、歯と歯肉の境目に溜まった歯垢です。歯垢は、歯周病菌や虫歯菌など細菌の塊で、歯磨きが不十分な時に溜まり、この状態が続くと歯垢は増殖し、歯と歯肉の隙間へと入り込みます。
一方、私たちの体には、細菌から体を守る力(抵抗力)があります。歯周病菌は、ほぼ全ての人のお口の中に存在しますが、全ての人が歯周病になるわけではありません。歯周病になるか、ならないかは、歯周病菌と抵抗力のバランスです。歯周病菌が多くなった時(歯磨きが不十分)や、体の抵抗力がおちた時(体調不良・疲労・ストレスなど)に発症しやすくなります。
症状は、歯肉が赤く腫れる・歯磨きで出血する(歯肉炎)などに始まり、進行すると慢性的な歯肉からの出血・排膿、酷い口臭、歯肉は下がり、歯はグラグラし(重度歯周炎)、最後には抜けてしまうこともあります。
健康な歯肉 | 進行した歯周炎 | 進行した歯周炎 |
歯周病菌は、血管やのどを通して、全身に悪影響を及ぼします。
糖尿病や脳梗塞、心臓の病気(狭心症・心筋梗塞・細菌性心内膜炎)や呼吸器の病気(誤嚥性肺炎)、早産・低体重児出産などとの関連が分かっています。
特に糖尿病がある場合は歯周病を悪化させ、歯周病は糖尿病を悪化させるという密接な相互関係にあるため、歯周病と糖尿病の治療を並行して行い、悪循環を断つ必要があります。
近年、「オーラルフレイル」という新たな考え方が注目されるようになってきました。「フレイル」とは身体の衰えのことです。つまり「オーラルフレイル」とは、お口の機能低下に伴う食習慣悪化の徴候が現れることを言います。新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生命科学専攻口腔健康科学講座 宮崎 秀夫教授の研究から、歯の喪失は「オーラルフレイル」→「フレイル」→寝たきり→死亡と連鎖していく可能性が高いことが明らかになっています。この負の連鎖を未然に防ぐには初期のお口の機能の衰え予防が重要です。
お口の機能の衰えを予防するには、むし歯や歯周病、歯を失った場合に治療を受けることはもちろん、定期的にお口の健康状態を診てもらうことが必要です。
このように全身疾患に大きな影響を与える歯周病ですが、発症当初は自覚症状がありません。
われわれが実施する歯科健診では、口腔疾患の有無を診査するとともに、口腔清掃状況を評価し、毎日の口腔清掃が適切に実施できるよう指導を行っています。
歯周病の直接原因は歯面に付着したプラークです。
歯周病の予防も治療もプラークコントロールが基本となります。
そこで正しい口腔清掃法を習得することがとても重要になります。
セルフケアのひとつであるブラッシングにはさまざまな方法があり、また各個人により適するブラッシング法は異なります。ともすると特有の磨き癖がある方もいらっしゃるので、正しく磨くためにはブラッシング指導が必要となります。
ですから、その予防や早期治療のために、少なくとも年1回の定期健診が必要となるのです。
報道健保で実施している歯科健診では歯、歯ぐき、清掃の状況だけでなく、滑らかに舌が動くか、わずかなむせはないか、お口の中は乾燥していないかなど「オーラルフレイル」の始まりである徴候についても診査を行っています。